フィリピンの行政:基礎知識

フィリピン国の行政

81の州から成るフィリピンは、立憲共和国を採用しています。 米国式の大統領制を採用していることに見られるように、フィリピンの行政・統治機構は、長年、支配下にあったアメリカ合衆国の行政・統治機構に大きく影響を受けています。

フィリピンの行政・統治機構は、基本的に、中央政府、州、市・町、バランガイのと、4つの層から成っています。

国レベルの統治機構は、大統領を中心に、中央政府(行政)、国会(立法)、裁判所(司法)の三権分立が確立されています。

権限が非常に強いフィリピンの大統領/国家元首

国家元首である大統領は、国民から直接選挙制によって選出されます。 大統領の任期は6年。なお、現憲法では、大統領の再選は禁止されています。 同様に、副大統領も連続三期(一期3年)以上、務めることはできません。

日本の首相などに比べて、フィリピンの大統領の権限は非常に強く、行政権のほか、国軍統帥権、戒厳令発動権、条約締結権、法案拒否権、裁判官任免権、各省長官、裁判官を含む上級公務員の任命権・人事権などなど、非常に広範囲にわたっています。

独裁政治を防ぐため、議会などによる制約があるものの、フィリピンの大統領が持つ人事権は、 地方自治長官を通じて、間接的に地方自治体にまで権限がおよんでいます。そのため、アメリカ大統領の権限より、ささらに強いと言われています。

二院制のフィリピン国会

フィリピンの立法機関であるフィリピン国会(Congress)は、上院(Senate)と下院(Chamber)から構成される二院制を採用しています。

上院は、全国区で選出された24名の議員から成り、任期は6年。二期まで務めることができます。 上院議員の政治的地位は高く、全国的に知名度の高い政治家が選出される傾向にあります。 全国区に名が売れた「タレント議員」もいることは、日本の参議院と共通?でしょうか。

下院は、約254名の議員から成り、任期は3年。三期が限度です。 下院は、全国を区割りした「小選挙区」から選出された議員204名、そして 全国区として政党リストから各党の投票数の割合で選出される50名で構成されます。

ちなみに、国会議員の被選挙権は、上院議員が35歳以上、下院議員が25歳以上のフィリピン国籍保有者となっています。

フィリピンの行政機構

フィリピンの大統領は、国家元首であり、行政府の長の地位にもあります。行政事務を執行するにあたっては、内閣を設置し、その閣僚を任命する事ができます。

内閣は、大統領、副大統領のほか、官房長官、報道長官、国家経済開発庁長官、など19省の長官から 構成されます。

19省とは、外務省、予算行政管理省、財務省、内務・地方自治省、国防省、司法省、農業省、農地改革省、環境・天然資源省、観光省、商工省、運輸・通信省、公共事業・道路省、エネルギー省、社会福祉省、保健省、労働雇用省、教育文化スポーツ省、科学技術省です。

加えて、より総合的な経済開発の施策を担当する国家経済開発庁、大統領の直属組織で各行政機関の総合調整を行う大統領府、国家の保障会議、国防、対外政策に関する大統領の非公式諮問機関である国家安全保障会議などがあります。

各省は、政策を推進させるため、フィリピンの各行政管区に、地方事務所を設置しています。

フィリピンの地方行政

フィリピンの行政単位は、フィリピン全土にある14の行政区(Region)と、 マニラ首都圏(Metro Manila)および2つの自治区(Autonomous Regions)、つまり 合計17の行政管区に分けられています。

フィリピンの地方自治体は、州(Province)、市(City)&町(Municipality)、 バランガイ(Barangay)という3つの層から構成されています。

2006年末時点で、81の州と61の公認都市があります。

州は、市および町から構成され、日本で言えば都道府県に相当します。市および町はバランガイから構成され、日本で言えば市町村に相当します。

そして、市と町もバランガイから構成されています。バランガイという言葉は、もともと「帆船」という意味を持つ言葉で、フィリピンの伝統的な村落社会を意味していました。

やがて、今のようにフィリピンの自治体の最小単位を表す言葉として使われるようになりました。バランガイは、社会学者に言わせると、日本の自治会や町内会に近い構造を持っているとのことです。

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